そしてオタクは続く

一歩踏み出す勇気

収束点 ― KING SUPER LIVE

  • プレビュー

キングレコードがフェスをやるって聞いた瞬間は「やってろやってろ」ってスルーの構えだった。フェスで見るくらいならワンマン行くよって。
そんでメンバー見たらそこに林原めぐみさんがラインナップされてて、その瞬間に「これ行かないととんでもなく後悔する!」って切り替わった。
「二日間とも同じ出演者、追加出演者なし」という状況から、これは片方だけ行ければ十分かなという感覚が走る。行きたいと心の底から思っていても、フェスが好きではない俺は変わらずいるわけで、二日間を飽きずに見ていられるはずがない。
そして俺にとって最重要なのは「林原めぐみさんがライブで歌っているところを目撃する」ことで「林原めぐみさんが"この曲"をライブで歌っているところに立ち会う」ことじゃないということ。言ってしまえば、履歴をつけられればいいぞと。
そういうわけで、当たった方に行こうということで土曜の一日目に行ってきた。

  • お席

200レベルの5列目。両ワイドに伸びたステージの下手側のほど近くで、アリーナを見るとAの最前列の位置。ステージ上の出演者と同じ目線の高さで、大変に見やすい。
通路にも近くて、見るもよしトイレ行くもよしと。


  • 本編

順番に一組ずつ感想を。長くなったりひとまとめになったりする。


高橋洋子
開演直前にエヴァンゲリオンのBGMがかかっている流れを受けて。
アニサマ2007のシークレットで聴いたり、それこそカラオケ大会かよってくらいカバーされたりしているけれども、やはり高橋洋子さん本人による『残酷な天使のテーゼ』と『魂のルフラン』が持っている圧力の強さ・説得力の高さみたいなものをまざまざと見せてくれた。これこそ時代を作ってきた楽曲の持つ強さで、一気に上がった。


堀江由衣
俺としては不満が残る。俺の求めていたものとはかなり開きがあった。
「ヒカリ」も「YAHHO!!」も嫌いってわけじゃないけど。古い曲をやることが正義だっていうわけじゃないのもわかっているつもりだけど、それでも、キングレコード生え抜きの言うなれば『エース』なわけじゃないですかほっちゃんって。自分の歴史はキングレコードの歴史だってくらいに誇示してほしかったな。若い子を置いていくとしてもさ。こと今回については全体的に置いていってるんだし。
俺は「Love Destiny」でこっちの世界に入ったので、ここで歌ってくれたらめちゃくちゃ嬉しかったんだけどね。過去にライブで聴いたことあるけど、このKING SUPER LIVEで歌ってくれて、シスプリここにありと見せてくれたらなぁと。
二日目は「スクランブル」か。もうひと押し遡ってほしかったけど、いろいろと考えてくれてのこれなんだろう。
今回の出演者で唯一、うーん残念って思った方だった。ただ堀江由衣さんは終盤で良いのくれたから、それはどうもありがとう(後述)


米倉千尋
フェスの良心、最強の二番打者(3番目だけど)ちっひー。「確かな仕事」をさせたらこの人の右に出る者はないと思ってる。
ただ、普段のフェスとかで聴くものと、キングレコードの名の下に歌われた今回の「嵐の中で輝いて」はグレードがだいぶ違った。受け取るこっちの気持ちなんだろうけど。
「WILL」を選んだのもそうだし、「確かな仕事」を超える大活躍をしてくれた。


佐藤聡美
・カスタマイZ
ゆいかおり
・かなでももこ
小松未可子
・every ing!
上坂すみれ
小倉唯
米倉千尋さんで軽くオーバーフローになってるところで若手のお時間。ここを小倉唯ちゃん以外は一曲でやって早々に入替えていった判断は凄いことだと思う。もっとアピールして売っていきたいだろうに、「今日の主役はここじゃないんで」とばかりに潔くやって潔く去って行った。
ここは頭と気持ちの小休止って感じでヘラヘラ見ていたので、感想もヘラヘラ。
「ミライナイト」は生徒会役員共を見ていたのでけっこー好き。
カスタマイZのドラムの線の細さとちょい荒い叩きっぷり。
ゆいかおりのシンメ(いやまぁ線対称じゃあないっすけど)は定期的に見たいよね。
かなでももこっていわゆる新人よね?堂々とできてたんじゃないっすかね。
「Black holly」しっとり入ってくれてありがとう、一軍登録しておきたいでお馴染みのみかこし。
僕は山崎エリイちゃん!!!!でも木戸衣吹ちゃんも可愛い!!!
すみぺと一緒に出てきた風船があさま山荘をぶっ壊す鉄球にしか見えなかったw
「L! O! V! E! LOVE ラブリー唯ちゃん!」がアニサマ2013を超える孤立っぷりでワロタ


松澤由美
これがなかったら一生のうちに見ることがなかっただろう人で、聴くこともなかっただろう「YOU GET TO BURNING」が聴けてとても良かった。
なんだろう、言葉にするととても薄い。でも、とても嬉しかったし気持ちが高まった。
思い入れって言われ方にするとどうしても、ナデシコをほとんど見ていない(スパロボで関わったくらい)から薄くなっちゃうんだろうな。でも、この曲とは長く関わってる。他の作品にしても似たようなことあるんだけど、アニメの視聴体験よりラジオで聴いた思い出の方が強くあることが多いな。
そんなわけで、薄い俺なりに松澤さんはとても楽しめた。


保志総一朗
保志さんは1月の奈々ちゃんアコースティック以来、そして昨年のアニメジャパンのハートフル公録と合わせて3回目。「Shining Tears」しか知らない身としては、満額お釣りなしビシッとカッコよく決めてくれた。
一曲だったんだよね保志さんも。声優としては輝かしいキャリアを持ってるけど、歌でアニソン界を代表する曲って(保志さんの中でじゃなくて業界でね)これ一つなのはまぁ間違ってなくて。そこの線引きというかバランスというか、上手くとってくれていたなと思った。前後の繋ぎ役みたいな位置を受け容れつつ、しっかり存在してくれた。


林原めぐみ
「Give a reason」で出てきた瞬間の「きた本物!え、Tシャツジーパン?w」
ラフな衣装でオーラが減退するんじゃなくて、林原めぐみ本体から放たれるオーラをそのまま外に通してるみたいな。存在だけで圧倒された。
そして待っていた時が来た。
「よみがえれ」
この瞬間のためにチケットを取っていた。俺にとって林原めぐみは「Over Soul」だった。Northernも好きだけど、やっぱり聴くならこっちだった。「あぁ、いま俺は本物を見てるんだ聴いてるんだ」っていうことだけで満足できた。
学生のころめっちゃ聴いてたもんな。ラジオでも家でも。具体的にこんなエピソードってのはないんだけど、漠然と学生時代ってくくりなんだけど、それこそが林原めぐみやこの人の曲の強い強い日常性・汎用性・一般性なのかなと思う。
俺も間違いなく、林原めぐみに育てられた一人なんだ。


前半終わり。
休憩時間中に早くも感想戦をしながら酒を飲む。旨い。林原めぐみの後の酒が美味しくないはずがない。


陰陽座
バジリスクと関わらなかったので、このラインナップを見てで一組だけ「異様だなぁ」って印象を持ってた。
甲賀忍法帖」かっこよかったからそれでOKっす、2部の入りってことで。


喜多村英梨
やっと"手札"に入ってる人が出てきたなと。何をやっても対応できるけど、"ここで"何をやってくれるのかってのに期待。
結果、「凛麗」と「Birth」で大満足。特に「凛麗」のチェンジペースで首を振るのが気持ちよかった!ちょうど、酒も入れてたしねw


奥井雅美
ソロで見たのは何年ぶりだろう、ずっとJAM Projectの人として見てきた奥井雅美さん。"このKING SUPER LIVEで歌う"ことで一段も二段も格が上がるなと。歌ってる側からすりゃいつでも全力だろうし受け取るこっちが勝手に格を上げ下げするなって話なんだけど、ともかくこの奥井雅美はいつもよりさらに極上の奥井雅美だって思った。
本人もカバーも飽きるほど聴いてきた「輪舞-revolution」をここで聴けることの意味というか説得力(この言葉を使いたがるのはプロレスファン)だなって。


宮野真守
宮野真守さん、田村ゆかりさん、水樹奈々さんの3人は今の世代のトップランナー。出演者を見た時に、この人らにここで求められていることって「今」を出すことかなと感じた。歴史・過去を受け継いで、今こうして自分たちが立っていると、その今がすげぇんだぞってところを見せる役割かなって。そこについては3人ともしっかり役目を果たしていたんじゃないかなと。
宮野さん出てきた時「まぁ男が男にキャーキャー言うのもね」って流しにいったけど、「オルフェ」はやっぱかっこいいねぇ。ウルトラマンキングレコードだったらなどとテキトーな願いをしていたりもしたけどさw


田村ゆかり
宮野さんの項のとおり、今を出しつつも一曲目が「Little Wish~first step~」を選んでくれた。
「なのは」で田村ゆかりの歌が広まったというか、キングの田村ゆかりになったというか、そんな印象あるので感慨深いものがあった。久々に16連ゆかり!したしね。この後に控える奈々ちゃんがどう応えるかってところもにわかに注目したいなとか思ってた。
あと個人的には「W:Wonder tale」好きなので満足。


森口博子
森口さんが歌うのは「水の星へ愛をこめて」と「ETERNAL WIND」の二つで決まりってところがわかってて、わかりきってて、それで聴き入って「すげぇ!」ってなるのが素晴らしいよね。
この人を初めてテレビで見た時はもうバラドルになってて、先にそっちを知ったから「なんで森口博子ガンダム歌ってるんだろう?」くらいに思ってたんだよね。その時期も含めたキャリアについてご本人から話を聞いて、アニソンすげぇなと。不朽なだけじゃなくて、時代ごとに新しい意味づけも加わっていくんだなって。


水樹奈々
この森口博子の後で、林原めぐみを前半の終わりに持って行って、トリをどう務めるのか。現チャンプにかかる責任は小さくないぞなんて煽り目線で。
そしたらこれぞ水樹奈々の正攻法、ただただ強大な物量で押し切るというね。さすがだぜウルトラマンで言えばダイナのストロングタイプだぜ奈々ちゃん。
でもほんとさ、当たり前のようにフライングして当たり前のように花道を猛ダッシュして、それでも歌声のパワーが全く衰えないなんて凄まじいことだって改めて感心した。この物量をもってここまでのし上がってきたもんね、これが水樹奈々だぞと。
Little Wish」を受けて「Innocent Starter」じゃないのって話もあるんだけど、「Eternal Blaze」こそ水樹奈々の"名刺"だしこれがなければ今のステージまで上がれなかっただろうからこれはこれでアリかな。


以上21組。


コラボのコーナーはアフターパーティみたいな感覚で見てたから何か書いておこうってほどでもないんだけど、一つだけ。
「For フルーツバスケット」を、岡崎律子さんをどう組み込んでくるか、っていうのはキンスパへ心の準備をするにあたってずっと気になっていた。俺としては賛否両論あろうとも、"エース"堀江由衣さんが一人で(できれば堀江由衣の一曲として)背負って歌ってほしいなと思っていた。それが堀江由衣さんのできる最高のことじゃないかなと。
結果、4人で歌われて、まぁそれはコラボコーナーってくくりに入れた以上はしかたがないことで。キングの歴史にフルバを、律子さんを刻むということがいちばん大事だし、この4人にほっちゃんがいるなら十分だろう。ほっちゃんの歌うところだけはかなり研ぎ澄ませて聴いて、自分の期待を成就させてあげた。

  • まとめ

キンスパ行くぞと決めてから、予習って全然しなかたった。
キングレコードの歴史と、自分が経験してきた歴史とを合わせてどういう感情になるかってことだけに興味が沸いていた。付け焼き刃のような予習をしても意味があるとも思わなかった。
俺はずっとアニメを見てきたわけじゃない、どちらかと言うとアニソン好きって方だからいくつか"抜け"はあった。それでももう感情は揺さぶられっぱなしで、ここに来て本当に良かった。
気分としては「林原めぐみの一点突破」だった。失礼にも間接視野くらいにしていた人たちにもとてつもなく楽しませてもらえた。"一点"に絞らせてもらって期待させてもらった林原めぐみさん、あなたやっぱりすごい人だ。


このライブの構成を作り上げたスタッフさん、三嶋さんは関わってると思うけど、とんでもなく素晴らしいライブに仕立て上げてくれた。
出演者の合間をなるべくなくして、流れと熱を上手く繋いでくれた。出演順や曲数もとてもしっかり工夫されていた。「これ経験しちゃうと他のフェス行けなくなっちゃうよ」ってくらい、余計なストレスがなかった。
どういう想いで客が集まって、何を期待しているのか。そこをまず汲み取っていたんだと思う。自分たちが何を見せたい聴かせたいかということよりも(まぁ一致は多かっただろう)。そう思わせてくれただけで十二分に幸せだ。ぜひ、一杯おごらせてほしいって気分だw


満足度がめちゃくちゃ高い故に、次を期待する声があるのもわかるっちゃわかるんだけど、俺は二回目があるとはあんまり思ってないんだよね。
今回を同等に気持ちが、熱が集まることなんてないと思う。俺で言うと、次があって、また林原めぐみさんが出るとして、今回ほどのテンションになるかどうか。二回目の「Over Soul」がどれだけのものに感じられるか。ちょっとイメージつかないかな。
この素晴らしいライブを作ってくれたキングレコードのことだ、二回目をやるなら二回目に相応しいやり方で、期待に応えていくんだろう。ただそれは、同じようなフォーマットだとしても、今回のKING SUPERE LIVEとはだいぶ変質するようにも思う。



ここからは更に、「後から振り返って」って感想。
いろんな知人友人がここに来ていた。それぞれいろんな想いを抱えていたと思う。
ライブが久々だって奴、今日はなんとしてもこれが聴きたいって奴、これをもってライブとか行くの終わりって奴。いろいろ。
いろんな奴のいろんな想いがこのキンスパという一点に収束して、大変な熱量だっただろう。その熱を受け止めて、丁寧に打ち返していくようなライブを作り上げてくれた、キングレコードと出演者、皆さん素晴らしい仕事をしてくれた。一人でも多くの、一つでも多くの想いが実を結んでいることを願う。
「このメンバーが集まることはない」っていつものライブの何倍も何十倍も思う。一点に集まって、また散っていくんだなって感じてる。
「どうか、これからの皆の旅路に、幸多からんことを!」なんて、珍しく周りを思いやりたくなったりした。